余興

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 「あの男は以前、重い病気にかかっていたのだが、我々神の慈悲で、病気を直したのじゃ。それまで毎晩、神に助かりたいと祈っていたのじゃが、病気が治った途端に、祈らなくなった。そればかりか、女を騙し金を奪うばかりか、人生そのものを堕落させる始末。そんな人間に、果たして慈悲は必要だったのじゃろうかのう?」  「……そ、それは」  僕は、返す言葉がなかった。  周りの神様たちも、一応に自分たちが救ってきた人間を見ては、年老いた神様のように、自分のしてきた慈悲についての疑問を口にしていた。  「若い神よ。お主は何か勘違いをしていないだろうか?」  「勘違い?」  「さよう。神は、人間のために存在するのではない。この地震も、東京という土地に宿りし聖霊を救うための行為。人間によって、長い間穢れた土地や聖霊は限界を迎えておる。このままでは、やがてこの土地に人間も住めなくなってしまう。若い神よ、お主も神であるなら、大局を見る目を持たなければならないぞ」  僕は、それから年老いた神様に、何も言い返すことは出来なかった。  この余興は、神様が日頃溜め込んだ不満や疑問、矛盾に対するガス抜き。人間を相手すると、神様でさえ病んでしまうようで、そのために年に一度、宴が開催されるのだと、年老いた神様は話す。  やがて、余興は終わり、宴もお開きとなった。  神様たちは、満足した顔で会場を後にする。  僕は、何とも言えない後味の悪さを残し、会場を後にした。
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