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宴の後
宴の会場を出た僕は、近くの川の畔で涼んでいた。
水面に映る顔を見て、僕は神としてやって行けるのか、自問自答をしていた。
「おやおや、どうしましたかな。若い神よ?」
そんな僕に声をかけたのは、年老いた神様だった。
両手に抱えた天女に待つように声をかけ、年老いた神様は僕の隣に座った。
「どうも飲み過ぎたようで、天女さんたちに送ってもらうところじゃた」
「……そうですか」
「若い神は、随分と落ち込んでいる様子。如何なされたのじゃ?」
「……いえ、僕は神になって良かったのでしょうか?」
率直な自分の気持ちを、年老いた神様にぶつけてみた。あの余興――もとい、惨劇を前にして、僕は他の神様のようにスッキリすることも、納得することも出来なかった。
そんな矛盾と疑問を抱える僕に、年老いた神様は語りだす。
「神様ってやつは、なりたくてなるものでも、なりたくなくてなれないものでもない。人間が、聖霊が、生物が、大気が、空気が、創り出すのが神じゃ。お主も、誰かに敬われ、奉られて、願われて、畏れられて神になったのじゃ。その願いを、叶えてやろうとは思わないか?」
「……ぼ、僕は」
僕の目からは、自然と涙が零れていた。
八百万――。
願いの数だけ、神様は存在する。
僕が神になったのも、誰かの願いのためであり、矛盾や疑問を神が持っていても、いいんじゃないのかと思えた。
だって人間も、同じように矛盾や疑問を抱えながら生きているのだから。
「どうやら、迷いはなくなったようじゃな」
「はい、ありがとうございます」
そう言って、僕は年老いた神様と別れを告げた。
「あ、そうじゃ。若い神、最後に名前を聞かせてくれないか?」
僕は振り返り、年老いた神様に名前を告げた。
「僕はマヤ。人間は閻魔と呼ぶ、冥界の王です」
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