神様

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神様

 「お主が新人の――」  「はい。よろしく、お願いします!」  僕は元人間の神。  といっても新人の神様で、何でこんな僕が神になったのか心当たりがない。  高天ヶ原と呼ばれるここに来る前、即ち生きている間に何かを成した覚えもなく、僕がなぜ神様になったのか。  謎は解けないが、とにかく僕は神になったらしい。  「これはこれは、元気な神だ。この先が楽しみじゃ。それにしても、若いってのは素晴らしいね。私も若い時は――」  人間も神様も、年寄りは昔話が好きなようだ。  神様――ってやつは、こんなにも人間くさいやつなのだろうか?  それとも、単純にこの神様が人間くさいだけなのだろうか?  とにかく、長い話が終わった頃。  話は、本題へと入っていった。  「へー。それで今日は、何の集まりですか?」  「おや? 聞いてないのかい?」  「ええ、まったく」  「今日は、年に一度の楽しい宴の席じゃよ」  「宴?」  神様は、お酒が好きなのは知っていたが、年に一度宴を催しているとは知らなかった。  僕は、あまりお酒が得意な方ではないが、神になったからには、こういった行事にもなれなければ……。  そんな風に思っていた。  「まあ、気楽にさない若い神。宴といっても無礼講じゃ。それに、皆が楽しみにしているのは、余興の方じゃからな」  「余興? 一体どんな余興ですか?」  「それは、始まってからのお楽しみじゃて……」  含みのある笑みを浮かべ、年老いた神様は会場の奥へと行ってしまった。  神様が、楽しみにしている余興とは、どんなものなのだろう。  僕は、不安と一緒に胸が高鳴るのを感じていた。
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