好きだから

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──「え、彰良に何?」 驚いて何も言えない俺を置いて隣の奴がいきり立てる 「ちょっと・・その、・・いい、ですか・・」 たちまち困った顔になるのは、勢いで来たからなのか 「・・・颯太は知ってんの?」 顔を伏せたあいつが、小さく頷く 颯太は今渡り廊下で写メとプレゼントの波に沈められてる 了解を取っているなら、前から考えていたことなんだろう 立ち上がって目で廊下を合図すると後ろからついてくる。 えーっとか何とか聞こえたけど、もう今日は全部無視 外野に何か繕ううまい事も出て来ねえよ 平気そうな顔してんのでいっぱいいっぱいだ 階段上がって、一応上を見て人が居ないかだけ確かめる。 「ここで良い?」 振り返って踊り場を指差すと頷いてのぼってくる あの、屋上へ続く階段 一応廊下から見えない踊り場まで上がる。 ここまで上がれば盗み聞きされる事もない 軽く息をついて・・あいつを見た。 見たんだけど 「・・・、」 固まったまま、俺を見上げて半ば睨まれてる様な 「・・・。」 ・・うーん、怒ってる・・?いやー・・ 最後にちゃんと話したのはあのカラオケ。 あいつからしたら、それまで良い人で、多分それなりに心許してた俺に・・いきなり抱きしめられて、そしていきなりしつこいだの暴言吐かれたんだよな。 訳、解らなくもなるよな でも、こうして最後に来た 少なくともこうして俺の所に。 最後に謝るか。 気にしてなくても、気にしてても、 酷い事を言ったのは俺・・・ 「あり、がとう・・。」 はい? 謝ろうと思っていた俺の耳に入って来たのは 目の前で顔を歪ませているあいつから・・聞こえた、ありがとう?? 「何だ、そりゃ?」 思わず笑う ありがとうって言葉にも、目の前のおかしな顔にも。 ありがとうなんて言う顔じゃ・・ なんて、笑う俺が今度は固まる 大きく見開いた・・あいつの眼から零れた涙 「・・・、」 頬を伝って、小さな手の甲で拭われていくのをそのまま目が追う 「・・・笑って、くれた。」 手が目を覆って、口元を歪ませる 「わたし・・無神経な事ばかり・・ごめんなさい、 謝ろうとしてたけど・・でも、」 目を覆ったまま 新たに零れる涙に、・・・ズボンのポケットに両手をつっこむ 「お前が、・・謝る事じゃない。」 そんな風に泣きながら 俺が笑ったからとかって 馬鹿だろ 「・・・悪かったよ。あんな言い方ばかりして。」 俺の言葉に 驚く様に薄く開いた口が、何かまた言う前に 「結衣の事も、他の事も感謝してる。 ・・迷惑とか、そういうんじゃなくてちゃんと・・。」 泣かせて凄く悪いと思ったし 散々嫌な言い方したしと思って、こっちは言ってるのに 「・・・何なんだよ、お前は。」 一瞬前まで泣いてたのに。 口角上げて笑ってる口元を慌てて隠しても遅いんだよ 「だって、橘くんいきなり変わり過ぎで・・っ」 さっきのしおらしい涙は何処行ったのか 目元を拭いながら笑ってるし 可愛すぎるし ポケットの中の手を握りしめた
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