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「・・あっ、」
気がついた時にはもう遅い
書類の上に無残に転がっているたこ焼き
慌てて拾っても、ソースの跡が手遅れだ。
「あーあ、・・書き直しか、」
俺の言葉に返事はない
「・・・、」
「・・・。」
無言に耐えかねて、
目を合わせる
相変わらず真っ赤な顔が、正直に困惑していた。
「ごめんなさ・・、」
どうして謝る、
そんな、
泣きそうな顔で。
「たこ焼き。」
「・・え?」
「そんなに食べたかった?すげえ勢いで向かって来たし。」
「・・たこ、焼き?」
「だろ?俺が食う前に食いついてきたじゃん。」
笑って
ほら、とあいつの頬についたソースを浴衣の裾で拭う
「食いしん坊だな、・・結衣みてえ。」
「・・、」
嫌だったろ
マズイと思ったんだろ
「颯太、」
「えっ・・!?」
愛しい彼氏の名前に過剰反応して
そんなにビビるなよ。
「颯太がー、お前の作ったメニュー売り切ろうと頑張ってるよ。そっち行って来いよ。売り切ったら颯太に休憩入る様に言ってあるから。」
「・・・でも、」
頼むから
「こっちはいいから。」
一人にして。
床に落ちた書類を拾って新しいレポート用紙を出した。
「颯太と少し回ってくれば?今ならもう一緒に居ても平気だろ?」
「橘くんは・・?」
「俺はいい、そういうの・・めんどくさい。」
「・・・、」
あーもう
ほんと、めんどくさいんだよ
「じゃあ、颯太と回りながらラストのアンケート回収してきてよ。
それまでにこれ書き直しておくから。」
張りついた笑い顔を思い切りして
こうとでも言えば良い?
前みたいに
もし、あいつが、
そんな俺の顔を嫌だと踏み込んで来たりしたら・・・どうしようか
「・・・解った。」
そんな俺の独りよがりも虚しく
あいつは教室を出て行った。
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