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「終わるまでここに居るから。」
俺の言葉に、静かに頷く
「・・ごめんなさ・・」
「じゃなくて?」
「・・・ありがとう。」
俺を見上げて笑う
おっと。
手を頭から離して、こいつの手も俺から離して後退りして壁際に座る
懐中電灯の灯りをつけると、きょとんとしてる顔がこっちを見てる
「一応ね、俺も男だからー・・」
一応どころじゃねえけど。
落ち着いたら、あまりの近さに反射的に離れる
理性がそりゃ働くけど、けど一応好きな女ですし!?
「・・・えっ?・・えっ!?」
何その初めて知ったみたいな。
「ほんと失礼だよね、人を何だと思ってんの。」
「えっ・・?」
慌ててる慌ててる、まあ少し困れば良い
「でも・・橘くん、は・・ほんと・・ありがとうって言うか・・」
困ったままの顔で
俺のこと、何て言うんだろう
えーと、と・・考えている。
頭の中でぐるぐる考えちゃうのももう慣れたよ
と言うか、今俺のこと考えている
そう思うと・・素直に言葉を待っていようと思える
「いつも・・話聞いてくれて、楽しませてくれて・・こうして、私が落ち込んでると気にしてくれる。文化祭も、私こんなに楽しかったの初めて。
橘くんが・・一緒に委員やってくれて、本当に良かった・・。」
ちょっと、何そのまとめ
どれだけ頭の中に入ってんの
「一緒にって、結構意地悪で連れ込んだのに善人だね。ほんとそういうとこ颯太と一緒・・」
正面から言われるとこんな返ししか出来なくなるだろ
「俺じゃなくて自分が頑張ったんじゃん、だから皆も・・」
わっ、いきなり灯りを向けられて眩しくて言葉が止まって
懐中電灯の先を掴んで避けた
「良い人なのは橘くんだよ。そんな風に言わないで・・
結衣ちゃんの事見てるのもそうだけど・・誰よりも優しい人だよ。」
「・・・、」
懐中電灯のこっち側を握ったまま
向こう側を持ったままの小さな手を見たままあいつの言葉を聞いていた
そんなのさ
普通恥ずかしいし
優しいだなんて、言われると気持ち悪いけど
それでも嬉しいと思ってしまう
このまま
このままこの手を引けば・・さっきの距離になるんじゃないかと、
人のモノなのに、この腕に入るんじゃないかと
錯覚しそうになる
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