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体育館の方からひときわ賑やかな声が上がる
「盛り上がってるね・・。」
余韻を残して、あいつは無言のまま
見つめてるその眼に映るのは・・・颯太だけ。
真っ直ぐな横顔を純粋に綺麗だと思えた
自分の立ち位置は始めから、解っていたんだ
「あまり・・『出来た彼女』はいいんじゃん?」
颯太を想う、その横顔に呟く
「我儘言ったって良いんだ。私の男に手出すなって言って良いんだよ。それが言って許されるのはお前だけなんだから。」
俺の言葉に・・困った様に視線を彷徨わせて
俯いて・・繰り返す様に頷いた
「困らせたくない・・って、思うのは、・・間違い?」
「間違いじゃねえけど・・・、俺なら言われる方が良い。」
「・・やっぱり、橘くんの彼女は羨ましいな。」
だから、いませんけどね
そして、そんな風に・・我儘を言っても良いと思えるのはお前だけなんだけど。
俺の言葉でこいつがどうなるとかなんて、そんな事はある訳ないと解ってる
それでも、少しでも気が楽になれば良いと言わずには言われないんだ。
「あーあ・・終わっちゃったなー文化祭。」
「・・残念?」
こっちを振り向いた時、あいつは笑っていた
「うん。・・私、こんな風に学校で思えた事って初めて。
橘くんありがとう。」
「だから、お前の頑張りだって。まあ、始めはどうなることかと・・、」
「ほんと、私もどうしようって・・ってだから時々酷いから。」
一緒に
こうして笑って
「・・・楽しかった?」
「うん。」
「やって良かった?」
「うんっ。」
この笑顔を向けてもらえれば・・・いい
「じゃあ、良かった。」
楽しめたならそれでいい
そう答えて、・・あいつが俺の事ずっと見たままなのに気がついた
「・・・どうしてそんなに優しいの?」
「え?」
「橘くん・・私の事、嫌いだったよね・・・」
・・俺の正面に歩いてくる
真っ直ぐな眼に、・・俺が映る
「颯太くんとのことも、進路とかも・・本当によくしてくれて、
嬉しいんだけど・・いつも・・どうしてだろうって・・・あんなに、嫌われてたのに、」
「嫌って・・・」
は、いた。
うん、凄く嫌いだった。
「どうして・・・って、」
それは
好きだから。
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