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「・・何それっ!?」
さっき俺の背中にどう掴めばと戸惑っていたくせに
「颯太くんがどうして!?」
俺のシャツを両手で掴んで真っ直ぐに俺を見上げて叫ぶ
違った
──知らない?
颯太のあの顔は絶対彼女が絡んでいる筈なのに
じゃなきゃ自分から辞めるだなんて──
「橘くんに何て言ったの?颯太くんが本当に・・」
・・戸惑いを兼ねてぐるぐる回る俺の思考を妨げる彼女の大きな声
気がつくと・・駅の入り口で俺達はかなり目立ってた
周りの好奇に満ちた目に我に返る
「ちょっ・・」
黙れって、手で制止してもまるで見えてない
「橘くんっ、ねえ・・」
ああもう、
うるさいな
引いても聞かないこの女
背中に腕を回して引き寄せる
「黙って。」
くっついたまま耳元でそう言うと、俺の声か行動でか、ぴたりと固まって黙った・・後
「嫌・・っ、」
弾かれた様に俺の腕の中で、小さな体が俺を押し返した
「そんな嫌がんなくても何もしねえよ。」
ほんとだよ
腹立ったのはこっちだっての
何が嫌だよ
後ろに下がって溜息をつけば、離れて見えた彼女の顔が・・
え?
眉をひそめて怪訝にもなる
涙を零し始めた彼女は・・、
何も言わず踵を返すとばたばたと改札を入って行ってしまった。
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