泣かせた俺と颯太

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「・・・早く結婚したかったんだ・・」 ぶっ ちょっと待て。 颯太は笑う俺を見上げて面白くなさそうに目を細める。 ・・だって、そりゃそうだろ。誰に話したって笑うぞ 「バスケ続けたら、・・もう4年は間違いなくバスケで埋まる。 ずっと、小さな頃から我慢させているから。早く一人前になりたかったんだ。 社会に出て一人前になって・・早く結婚して安心させてあげたかった。」 「ふーん・・・」 安心、ねえ。 昨日の彼女の様子からして全然安心しそうじゃなかったけど。 「安心て、よく解らねえけど・・結婚したら安心すんの?」 「・・・。」 「まあ、お前んとこの親見てたらそう考えるのも解るっちゃあ解るけど、 ・・お前はバスケ辞めたいの?」 「・・・。」 面白い。 優等生の颯太のこのまどろっこしい沈黙 「・・面白がっているだろ。」 はは、ご名答 思わず吹いちゃうじゃん 「面白いとこ見れたからまあいいや、俺帰る。」 立ち上がると・・颯太は謝って来るって、すげえな。まだ引き下がらないんだ。 「俺が全面的に悪いし・・泣かせたままでいたくないから。」 泣かせたままで・・ つい先日の、泣かせたまま帰した彼女の顔が浮かぶ。 偉いねえ。 俺には絶対に無理、あんな風に大嫌いなんて言われたら即どうでも良くなりそう じゃ、 帰ろうとする俺に 「彰良、・・で、お前は何だったんだよ。」 あ、やっぱりそこを突いてくるのか。 「弁当箱だよ。昨日偶然会って貰ったんだ。」 事実を再度言って、歩き出す。 「・・それだけか?」 「それだけ。」 もう面倒で振り返らない。 じゃーなと手を振って、少し経ったら玄関の門を開ける音にただ感心してその場から去った。
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