面白い女

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「ただ投げるだけ。決まるなんて思っちゃいねーよ。」 「・・・、」 近い近い、どこまで行くんだよ。 ゴール真下まで行ったのをココ、と足で呼んで 「えいっ、」 言わんばかりに両手で投げたのはゴールの向こう側へ。 「想像以上の・・」 からかい半分だけどここまでとは。 「だから・・、」 笑いながらボールを取りに行くと、何?いじけてんの? 「力み過ぎなんだよ。」 一言いうと、瞬きをしながら・・続き?の言葉を・・待ってる? 「こう?」 「そう。」 こう持って、隣で俺のするジェスチャーを素直に見て習っている 「で、軽く添えて真っ直ぐ向いて、ほいって感じ。」 「かーるく・・まっすぐ・・ほいっ、」 馬鹿正直か ぽすっ だけど弱々しく投げられたボールが、ゴールをくぐったよね ミラクル。 「わあっ、」 凄いっ、はしゃぐ声につられて見ると・・めちゃくちゃ嬉しそうな顔。 「初めてかも・・っ、凄いっ。」 「・・・うん、俺凄い。」 「うん。橘くん凄いっ、」 だから、 悪い気しないのは、そうやって単純に言われたら。そりゃあ、普通は誰でもそう、だろ。 ほいっ、て掛け声かけながらやってる姿に 「何で部活観に来ねえの?」 別に・・バスケに興味ない、とかそんな感じじゃないこいつ。 俺が決めた時の素直な言い方も、自分でやってる感じもな。 だから率直に聞くんだけど、 顔が固まって、目を少し泳がせた彼女は・・言葉を探している風に見える。 「嫌な人も・・居るでしょ?」 小さな声で、そんな風に。 「別にー、自分が観たかったら来れば良いんじゃね?」 だから余計にでかい声で返す。 実際、そう思ったからだけど。
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