白い服

　白い服を着ている人が怖い。
　理由なんて判らない。ただ、白い服を着ている人にとんでもない恐怖心を掻き立てられる。
　過去に、何かトラウマになるようなことがあったのではないか。
　周りにそう言われ、両親に白衣が怖いと訴えたら、それには理由があると説明された。
　幼稚園の時、俺はインフルエンザにかかり、かなりの高熱を出したらしい。
　両親はすぐさま俺を病院に連れていき、適切な処置が施されたのだが、その時注射をした看護師が新人で、俺は痛がって泣きじゃくったという。
　俺が白衣に怯えるのはその経験のせいだ。
　そう教えられて納得したけれど、白衣恐怖症を克服することはできないままだ。
　今はもう、普通に医者に行けるし診察を拒むこともない。注射だって当たり前に打ってもらえる。
　それでも相変わらず白い服を見ると怯えてしまう。この刷り込みに辟易していたある日、俺はたまたまテレビで、自宅で葬式をする際はどうすればいいのか、的な内容の番組を見た。
　死体に扮した役者さんが棺桶の中に横たえられている。
　それを見た瞬間、俺の恐怖心がこの上なく意識に溢れた。
　違う。医者関係の白衣じゃない。俺が見たのは白い服は亡くなった人がまとう死に装束だ。