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何の準備も、ムードも無いようなものだ。俺としてはもう少し頑張りたかった。けど、シンプルな言葉でここまで喜んでくれる比嘉くんが、本当に愛しい。
俺の肩に顔を埋める比嘉くんの髪を撫でた。
「普段は比嘉くんは俺より男らしいのに……泣き顔見る回数は多いかもね」
「すみません……格好悪い所ばかり見せて……後でお風呂に行って……」
比嘉くんの声はそこで途切れて、彼は眉間に皺を寄せた。数秒後、険しい顔は緩んだ。
「佐倉さん、一緒に入りませんか?」
「えっ……?」
「お風呂」
─ ─ ─ ────
恥ずかしくて遠慮したのに、せがまれて結局一緒に入る事になってしまった。脱衣所で服を捲り上けて脱ぐ比嘉くんの背中を赤面しながらちらちらと見た。
「ほ、本当に一緒に入るの?」
「はい」
プロポーズ後に一緒にお風呂なんて……。心臓がもたないかもしれない。
比嘉くんはと云うと、無表情ながらご機嫌に見える。さっき泣いていたのが嘘みたいだった。
彼が嬉しそうだから今更リビングにも戻れず、観念して俺も服を1枚ずつ脱いでいった。
「先にシャワー浴びてますね」
「う、うん」
浴室の戸を彼が閉めると、中から床にシャワーが降り注ぐ音が反響して聞こえた。
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