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「本当にすみませんでした」
「あ、えっと……もう大丈夫だから。酔ってたんだし」
「佐倉さんには本当に迷惑をかけました。償いをさせて下さい」
「つ、償いって……」
深々と頭を下げていたかと思うとばっと頭を上げ、彼は強い眼差しを俺に向けた。
「俺に佐倉さんのお世話をさせて下さい」
「……お、お世話?」
「洗濯でも掃除でも何でもやります。もちろんご飯も作ります。少しでも佐倉さんのそばに居て役に立ちたいんです」
「い、いや……そんなの悪いから」
いくら償いとはいえ、世話なんてさせられない。比嘉くんは店だってあるのに俺のご飯作ったりなんてきっと大変だ。俺だって仕事終わりに自分の飯の仕度でさえ億劫になるのに。
「気持ちだけで十分だから。反省してるのわかったし」
「俺の気が済まないんです」
比嘉くんも簡単には諦められないらしくてまったく退かず、俺が断れないような最終手段に出た。
「スイーツも毎日食べさせますから」
「……」
とても惹かれる言葉だ。カフェのケーキはわりと値段が高くて、毎日は食べられない。カフェでケーキを作っている比嘉くんのスイーツを食べられるなら、俺の財布に余裕が生まれるかもなんて考えてしまった。
彼の説得は続くが結局断れず、俺はしばらく悩んだ。そして彼と相談して、条件付きでお世話の事を考えることになった。 彼の顔が恐いのもあるが、彼の圧力には逆らえなかった。
やはり、俺は不運なのかもしれない。
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