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ご飯を食べ終わると箸をフォークに持ち変えて、彼がテーブルに運んでくれたスイートポテトを一口分掬い、口に運ぶ。滑らかなさつまいもの甘味ともったりとした舌触りが堪らない。幸せで自然と顔面が緩む。
「あー……美味しい」
「……」
スイートポテトを食べる俺を、比嘉くんが相変わらずの鋭い瞳でじーっと見つめる。一緒に過ごす時間が増えて、この迫力ある強面な顔にも大分慣れた方だ。
「ん……ひ、比嘉くん。見過ぎ」
「あ、すみません。すごく幸せそうなので見とれてました」
あの酔っ払い事件から比嘉くんには何もされていない。今ではあれが夢だったのではと思う程だ。
やっぱりただ酔っていただけなんだろうか。俺にとっては男に抱かれたなんてシャレにならない大問題なんだけど。事故で片付けるべきなんだな、忘れないと。
それと、もう1つ問題がある。この償いというお世話はいつまで続くのか、だ。期限は比嘉くんの気が済むまでらしいが、彼がもう辞めたいと言う気配がない。
こんな生活を長く続けていたら抜け出せなくなりそうで、いつまでも甘えてしまいそうになる。
そろそろ遠慮しないとな。何か比嘉くんに気を悪くさせないような断り方ないかな。
「……佐倉さん?」
「え……あ、ごめん! 考え事してた……何?」
「今日バイトの子にホラー映画のチケット2枚貰ったんです。友達と一緒に行こうと思ったけどものすごく怖いらしくて、見る勇気がないからって。でも俺一緒に行く相手居ないので、良かったら佐倉さん一緒に行きませんか?」
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