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2時間後、外はもう真っ暗で9時近かった。映画館を出ると、俺は疲れきってぐったりしていた。
比嘉くんの腕を映画が終わるまでずっと握り締めていたことを謝らないと。
「映画すごく怖かったね……。俺、今日一人じゃ寝られないかも。ぁ、比嘉くん。さっきは腕ごめん」
「……いえ」
「へ」
比嘉くんが素っ気ない。眉間の皺をより深く刻んでいて、俺から顔を背けてしまった。比嘉くんなら大丈夫ですよと、言ってくれると思ったのに。
怒っているんだろうか。三十路近い男にホラー映画見てて腕掴まれたら、いくら比嘉くんでも気持ち悪いか。おまけに、こんなあからさまに疲れた顔されたらウザイかもしれない。何かで挽回しないと。
「ひ、比嘉くん。もう9時近いし、俺奢るからどこかでご飯食べない?」
「……そうですね」
どこか上の空だが、一応了承してもらったので周りを見回し、雰囲気が良さそうな店を見付けて二人で入った。
男二人でも入れそうな気軽なイタリアンの店でピザやパスタ、さらにケーキ等を注文して食べた。
「お、美味しいね、ここの店。ケーキも美味しいし」
「……はい」
何故だ、会話が弾まない。
比嘉くんは俺がいつもケーキを食べている時は俺の顔をじーっと見ているのに。今日は眉間に皺を寄せ、いつも以上に険しい表情で自分の食べるケーキを凝視していた。
楽しくないんだろうか。俺、はしゃぎ過ぎたりしてるかな。
比嘉くんを見ていて少しずつ不安に思っていると、窓の外にキッチン雑貨のオシャレなお店があることに気付いた。
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