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「ほ、本当にすみません!」
とりあえず怒らせてはいけないと、頭を下げて必死に謝った。
すると、咄嗟にエプロンが入っている紙袋を金髪の男に取り上げられてしまった。
「何これー?」
「っ……すみません返してくださいっ!」
「うるせぇんだよっ!」
紙袋を取り返そうと手を伸ばすと、ぶつかった茶髪の男に腹部を殴られて咳き込んでしまい、俺はその場にうずくまった。すると彼の攻撃は止まず、体を何度も蹴られた。
「うわ、お兄さん弱っ」
「うぐっ! っ……お願いだから……がはっ! それは……返してっ!」
「彼女のプレゼントとかー? 中身なんだろー」
「やめっ……!?」
紙袋の中を開けられそうになって叫ぼうとした時。こちらに近付いてくる人影があり、見上げると比嘉くんだった。
「比嘉く……っ!」
比嘉くんの顔を見て、血の気がさーっと引くのを感じた。それはこの男達も同じように感じ取ったようで、その場が凍り付いた。睨み付ける鋭い視線や眉間の皺がいつもの比ではなかった。とても殺気立ち、俺は寒気すら感じた。
「な、何お前。今取り込み中なんだけど」
「その人の知り合いだ。早く何処か行け」
「はぁ? 意味わかんねぇし……ぐふっ!?」
比嘉くんはこちらに歩いてくると一気に距離を詰め、俺を殴った男を一撃で蹴り倒した。
直後、近くに居た金髪の男の首を片手で掴み、壁に押し付けた。耳元で何か囁いているみたいだ。俺には全く聞こえなかったが、比嘉くんに何かを言われた男は顔面蒼白で紙袋を地面に落とした。首を解放されると、慌てて他の2人を連れて逃げていった。
「佐倉さんっ! 大丈夫ですか!?」
「比嘉く……っ……ごめん、俺」
「謝らないで下さい、すぐに帰りましょう」
男達が居なくなるといつもの比嘉くんに戻っていて、俺は安心した。抱き起こされて肩を貸してもらい、比嘉くんが呼んでくれたタクシーでそのままマンションに帰ることになった。
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