映画とチンピラとスイートポテト

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「エプロン、ですか」 「比嘉くんに似合いそうだと思って。でも部屋でエプロンしてなかったし悩んだんだけ、ど……」  比嘉くんの顔を見ると、今まで見たことがない表情をしていた。目を細めて少しだけ口角を上げて自然に微笑み、エプロンを嬉しそうに握り締める真っ赤な顔に思わず俺はドキッとした。 「ありがとうございます、大事に使わせてもらいます」 「よ、喜んでもらえたみたいで良かった。比嘉くん俺と一緒に居るの、今日見てて嫌だったんじゃないかなって思ってたから」 「何でそんなこと思うんですか!?」  さっきまであんな表情をしていたのに、すぐにいつもの比嘉くんの迫力ある顔に戻った。しかも今まで声を荒らげた事もないのに大声を出したので、その変化にも驚いて変にドキドキしていた。 「だっ、だって、映画の時はずっと腕掴まれて気持ち悪かっただろうし、ご飯の店も俺と好み合わなかったみたいだし。おまけに俺が男の人達に絡まれたせいで面倒事に巻き込まれて俺のこと呆れただろうし……」 「っ!」  すると比嘉くんは俺の体をぎゅっと力強く抱き締め、その行動に俺は顔を真っ赤にした。 「ちょっ!? 比嘉くん!?」 「俺が佐倉さんを気持ち悪がったり呆れたりするはずないじゃないですか! それどころか、もっとそばに居て佐倉さんを守りたくなりました! もう可愛くて堪らなくて……」 「え、な、何言って」
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