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「上書き……」
比嘉くんにいきなり告白されて、俺は何から考え始めれば良いかわからない状態だった。
上書きと言われても何のことか全くわからない。でもこの比嘉くんの様子を見ていると、あの酔っ払い事件の事が思い出された。
「ま、まさか……」
「……俺にもう一度佐倉さんを抱かせて下さい」
予想が当たってしまい、顔面に一気に熱が集まった。
「だっ、ダメダメダメ! そ、そんなの上書きしなくていいから!」
必死に首をブンブン横に振った。
あれは事故なんだ、あんな恥ずかしいこと2回も出来ない。比嘉くんが嫌とかではなく、俺の気持ちの問題だ。
すると比嘉くんも退けない様子で……
「俺、あの日の事を佐倉さんにとって嫌な事のままにしたくないんです」
「い、いや……俺は大丈夫だから!」
いきなりの事で驚いたのと痛かった事は覚えている。けど比嘉くんが恐かった訳ではなかった。あの切な気な目と声は、俺を好きだと想ってくれていたからだとは全く気付かなかったけど……。
「俺が嫌なんです。俺はちゃんと佐倉さんに優しくしたいんです」
「や、優しいのは普段でも大丈夫だから」
「……じゃあ、今から少し卑怯な事をします」
すると比嘉くんはキッチンの方に向かった。冷蔵庫から四角い箱とフォークを1本持って来て、戻ってくるとテーブルにそれを置いた。
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