勝手に依頼を受けるんじゃないよ

1/8
前へ
/167ページ
次へ

勝手に依頼を受けるんじゃないよ

「月下美人? 確かに珍しいっちゃあ、珍しいけどねえ。この辺ではね。それがアタシの次のエモノに相応しいって?」 月の魔物の話が、昔語りに僅かに聞かれる程度になった頃。ある町の酒場でのことだ。男女が向い合わせで話し合う。 葡萄酒が並々と注がれたグラスと、淡水魚メインの小料理がテーブルに並んでいる。…そして葡萄酒の空き瓶が何本も。身を乗り出し、男が弁をふるう。 「フツーの月下美人は、だろ? 俺が言ってんのは、ガラスの塔にしか咲いてないってゆー、この世で唯一の月下美人のコトなの。決して枯れないってヤツ。」 「…ガラスの塔… あの月の魔物が作ったと言う、御伽噺に出てくる塔だね。」 グラスに口を付けそう言う女は、男の話に関心を示す気配が全く無い。 「あっクイーン・パール、御伽噺と思って侮ってんだろ。でもなっ! ついにガラスの塔に行き着いたヤツがいるんだぜ。まあ、月下美人までは及ばなかったらしいけど。」 「へえ… 確かな話かい? それがホントなら目指す価値はありそうだねえ。」 美しきトレジャー・ハンター、クイーン・パール。伝説と謳われる秘宝の数々を手にした、当代切っての腕を持つ冒険家だ。     
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加