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勝手に依頼を受けるんじゃないよ
「月下美人? 確かに珍しいっちゃあ、珍しいけどねえ。この辺ではね。それがアタシの次のエモノに相応しいって?」
月の魔物の話が、昔語りに僅かに聞かれる程度になった頃。ある町の酒場でのことだ。男女が向い合わせで話し合う。
葡萄酒が並々と注がれたグラスと、淡水魚メインの小料理がテーブルに並んでいる。…そして葡萄酒の空き瓶が何本も。身を乗り出し、男が弁をふるう。
「フツーの月下美人は、だろ? 俺が言ってんのは、ガラスの塔にしか咲いてないってゆー、この世で唯一の月下美人のコトなの。決して枯れないってヤツ。」
「…ガラスの塔… あの月の魔物が作ったと言う、御伽噺に出てくる塔だね。」
グラスに口を付けそう言う女は、男の話に関心を示す気配が全く無い。
「あっクイーン・パール、御伽噺と思って侮ってんだろ。でもなっ! ついにガラスの塔に行き着いたヤツがいるんだぜ。まあ、月下美人までは及ばなかったらしいけど。」
「へえ… 確かな話かい? それがホントなら目指す価値はありそうだねえ。」
美しきトレジャー・ハンター、クイーン・パール。伝説と謳われる秘宝の数々を手にした、当代切っての腕を持つ冒険家だ。
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