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彼女に相棒のくりあ・クォーツが次のターゲットを持ち掛けているところだった。
そう。今は話が歪み、ガラスの塔でこの世で唯一永遠を咲く月下美人を、月の魔物が育てているのだと、人々は語る。姫君のことは、もう誰も覚えていない。
「で、それをどうしようって? お前が花に関心を持つなんて俄にゃ信じられないね、ええ? くりあ?」
酒の肴を刺したままのフォークを、相棒の顔面すれすれに突き付けてパールが言う。お前の頭の中身はお見通しだよ、と、彼女の目は不敵な光を湛えている。
「うっ。実はクイーン・パール… とある人の依頼なんだよ。月下美人を盗って来てくれってさ。礼は弾むって…」
「大枚はたいてまで、ね。別に普通の月下美人でもいいんじゃないのかい? あれでも、この辺りでならそこそこ価値がある。…何か理由があるね?」
ぎらり、とパールが一睨みした。
「…なんか、俺にも良く分からんけど。不老不死の薬にするって言ってたよーな? 決して朽ちることの無い花… それも月の魔物が育てた花を煎じて呑めば、不老不死になれると信じてやがるみたいだ。俺はただの迷信だと思うんだけどなあ?」
訝るくりあが、パールに答える。
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