ブラック専用車両

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ブラック専用車両

 僕は今日から社会人!  やる気と勇気と希望に溢れた若者だ!  ――やる気があれば誰でも歓迎! 経験不問! 来たれ若者!  ――君の力で我が社と共に成長する喜びを感じてみませんか?  大学の求人告知でそのキャッチコピーを見たとき、この会社しかないと思った。  あれよあれよと最終面接に会社見学。  アットホームな職場で社員の皆さんも優しくて、豪快な社長さんも面白い人だった。  三流大学出身で何のとりえもなく僕を採用してくれるなんて、まったく懐が広いよ。  やっぱり選んで正解だったと、僕は自分の幸運に感謝したよ!  拾ってくれた恩を返すためにも、今日からバリバリ働こう!  いまは朝の6時。駅のホームは僕と同じ新社会人っぽい若者が大勢いた。  やっぱり新人らしく、やる気のアピールは大事ってことだな。  これは負けてられないぞ! 『次に参ります臨時列車は全車両ブラック専用となります。お乗り間違えございませんようご注意ください』  ……ん? なんだ今のアナウンス?  ふと、聞こえたアナウンスに違和感を覚えて首を傾げる。  臨時……? ブラック専用……? しかも全車両だって? 「やあ、あんた新社会人かい?」 「え?」     
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