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ただそれを当たり前なのだと勘違いするほどに傲慢だった。いつも飲みたいときに水があるとは限らない。当たり前だ。けどそんな当たり前を僕はあろうことか忘れていた。愚かだ。愚かな僕は罰としてまたモノクロに果てた。虚ろだった。僕が僕であるべき意味や価値や理由を作ったその何かが欠けてしまった。あぁどうしたものか。いや、どうでもないのだ、どうにもならない。もう僕ではなくなってしまったのだから。朝起きて夜に寝る、そんな簡単な当然が困難になってしまうような、巧みに話した母国語が、ある時魔法の呪文に聞こえるような、知らず知らずにくだらぬ言葉を覚えていたのに、ある時隣で歩く親友の名前を忘れてしまうような、僕としてあるべき最低限度の僕というのが死んだ。ならば今ここでみっともなく残滓としてふらついてる僕も、大人しく覚めない闇の中に身を投じるべきなのではないか。ただそれはやはり馬鹿だ。生きる価値のない塵芥は、死ぬ価値もないと、男と女が対を成すのと同じように知られたことではないか。生きるも死ぬも意味のない、そんな宙ぶらりんな僕はどうするべきか。きっとこうして数式とは違い答えのない問いにひたすら脳を使わなければならないのだ。使い潰すほどに、強いられているのだ。僕を創り僕を壊した、その何かは「君」という。
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