罪は子にも罪を着せる

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 そして、行き交う人々の先には幾つもに個室分けされたカウンターのようなモノが。その向かいにはベギアデと同じく仮面を被った正装の従業員らしき人が働いている。しかし、ベギアデとは決定的に違うのが――仮面の柄。  彼らの仮面に模様(もよう)は無く、前を見る為の穴が二つ空いたシンプルな白いものだ。少し、というかだいぶ不気味である。 「無上君? 感想を聞いても?」  そう言い放ったベギアデの声は少しばかり得意気だった。 「ああ、予想を遥かに上回ってますよ……」  自分の感情が高まってきているのが分かる。先日のような苛立ちや軽蔑(けいべつ)とは違い、期待や驚きといったプラスの感情が。 「そうかいそうかい。それは良かったねぇ。私も鼻が高いですよ」  そう言って胸を張るベギアデ。だが、何かを思い出したように間抜けな声を上げた。 「それと私から一つ。もう敬語は止して下さい。これからどんどん親密になっていかなければいけないのです。気を使われると仕事に支障が出ますしね」 「わ、分かった。それなら、ベギアデさんも敬語は止めてくれ」 「いやいや。私、これが素ですので、そう言われましてもなんとも……」  彼は照れ隠しのように頭――もといシルクハットをぽりぽりと掻き、乾き笑いを漏らす。  ま、これに関しては無理を承知で言ったようなものだ。何となく、彼はどんな相手にでも同じように振舞っているのだろうと想像が出来たから。 「それでは……話の続きはこちらの方で」  あの後、簡単にフロアの説明を受けた僕は、ベギアデに言われるがままカウンター奥の一室に案内されていた。  カウンター奥にはこの一室以外にも幾つか部屋のような扉を見受ける事ができ、予想だが何か重要案件を斡旋(あっせん)する際に通される場所なんだろう。  だが不思議なのが、僕の通された部屋だけ少し他の扉とは違っていた。こう、何というか……豪華というか、造りが良いというか。他とはどういう違いがあるのか、とても気になって仕方がない。が、今はそれよりも優先すべき案件が幾つかある。これはまた後日だな。
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