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感情という概念はいったい何なのか。哲学的な疑問かもしれないが、皆はそれについて考えたことがあるだろうか。
多岐に渡る感情というものは、分かりやすく〝行動〟という概念で括ると大きく四つに分かつことが出来る。
――衝動、反応、態度、気分。
人は憤怒すると態度に現れ、カッとなった衝動で人を傷つける事がある。人は気分が良くなると表情に現れ、言動が柔らかくなる。逆に気分が悪くなれば人の声に反応もせず、周囲に負のオーラを充満させるだろう。いや、これは人だけでなく、生物全体に言える事かもしれない。
このように、生き物の行動と感情は殆ど一致していて、例え普段感情を表に出さない人であっても、その心の内には目的に対する情熱や決意が存在している。
つまり、何が言いたいかというと――完璧を欲しいがままにした生命など存在しないという事だ。だからこそ僕は、完璧になりたい。
***
昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴り響き、学内で友人たちと談笑に花を咲かせていた生徒たちが虫のように散らばって行く。
あるものは笑い、あるものは泣き、あるものは怒る。しかし、その全ての感情に〝負〟の概念を見出す事は出来ない。恐らく、そういったものを〝友情〟と言うのだろう。僕はそんな感情を持ちえたことが故、それらを理解する事は到底かなわないが。
窓際に掛けていた肘を退け、軋む椅子に体重を掛け直す。外からふわりと迷い込む風が伸びてきた僕の前髪で遊び、少しかいていた汗を攫って行く。
普段から時間の有り余る僕の悪い癖で、そんな何気なく吹いた風であっても、何か意味があるのではないかと思考を巡らせてしまう。そして、その答えは海の流れと大気の循環であり、風に感情や生物に近い何かなんて有るわけない、という簡単な事に気づき、ふと笑みを浮かべる。
こんなのだから友達の一人も出来ないことは重々理解している。僕だって、窓際で独り風に当たり笑う人間とは関りを持ちたくはない。そんなのが絵になるのは所謂イケメンや美女といった類だ。生憎僕はそのどれにも当て嵌まらない。
「――でさー! あいつが――」
「――この間行った喫茶て――」
「――次の授業何だっ――」
ちらほらとしか座ってなかった教室に少しずつ活気が戻ってきた。
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