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結論から言うと、僕はベギアデに電話をした。言わずもがな、感情を提供するという話に乗る為だ。
やはり、乗り気になったところで詐欺臭い話であるのは否めない。だが、この話が本当だった場合、物凄いチャンスだと思った。
感情をどうやって人に渡すのかは判らないが、それだけで最低限五十万貰えるわけだ。いい話だと思う。やはり何であれお金には代えられない。
そういう訳で、今日は学校では無くベギアデに会う為に近所のデパートにやって来ている。何でも、隠れ家的な場所があるとかないとか。
何にせよ、あの変態仮面と一緒に居ても浮かない場所であれば何処でもいい。僕は一秒でも早く自身の知識欲を満たしたいのだ。あの仮面の下、これからの事、感情の譲渡の方法等々。疑問が湧いて仕方がない。
そんなこんなで、これから解決される疑問に頬を緩ませつつ現在、ベギアデに言われたデパートの地下三階、有名食品店同士の間にあるトイレ前のベンチにて、僕は腰を据えて彼を待っていた。
「んー……遅い。約束の時間を既に一時間は――お?」
そろそろ痺れが切れる、まさか僕をおちょくる為の大きなドッキリだったのか!? あ、友達いないんだった……。
と一人長い長い自虐を心中でかましていると、スマホが震えた。ベギアデからのようだ。
嫌味の一つでも言ってやろうか……。
『もしもし? 無上君ですか?』
「そうですけど、ベギアデさん……少し遅すぎや――」
『ああ、良かった。早速で申し訳ないのですが、取り敢えずトイレに入って貰ってもよろしいでしょうか?』
「う……話聞けよ。で? トイレって、このトイレですよね?」
話を聞かない人は嫌われるぞ、と小声で愚痴りながら、ベギアデの言っているであろう正面のトイレを見つめる。
こんなところで一体何を? まさか連れションじゃあるまいし……。
彼は僕の疑問を感じ取ったようで、またも癖のある笑いを響かせつつ言葉を続けた。
「クフフッ、それは入ってからのお楽しみですねぇ」
こいつ……変態さに磨きをかけて来やがったな……。
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