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序:壊滅
2060年。人類は旅客型宇宙飛行船で地球と月の間を往来することが日常的にできるようになった。
人類はありとあらゆる事をこの宇宙へ求めた。そして世界は宇宙に国境を定めるべく連日連夜会談や根回しが行われた。
そう。皆が皆新境地に胸踊らせていた。それはかつて侍の国と言われた日本も例外ではなく、宇宙開拓に向けての技術開発に余念がなかった。宇宙技術の推進は国が最も推進している国家政策であり、国民が最も期待する政策であった。
都内某所の応接室ではソファーにどっぷり座った醜悪そうな人相の男が葉巻をふかしながら部屋の時計を気にしている。
「平賀くん。どうだね?例の装置は実用化できる目処はついているとの報告はあったかね?」
平賀と呼ばれた神経質そうな男は、声の主の方へ向かうと使い古された手帳を開き、眼鏡の位置を中指で戻しながら答えた。
「えー…予定通りであれば、ただいまの時間実用試験が始まる10分前となっておりますのでまだ結果は分かりかねます。」
「お前は相変わらず頭が固い…まぁ…お前に意見を求めた私が悪かった。下がりなさい。」
そういうとその声の主は小さな声で呟いた
「元技術者の癖に分からんのか…」
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