0人が本棚に入れています
本棚に追加
化け物に当たったかなんて確認などせずに平賀は総理の手を引き部屋を出た。そのまましばらく廊下を歩いていると総理がおもむろに話し出した。
「平賀よ…そこを左に曲がったところに隠し扉がある。向かってくれぃ」
総理は平賀に代わり先導するように歩く。総理の醜悪な隈は取れ、少し精悍な男の顔をしているようにも思えた。
「これは他の秘書官らは知らない。この扉の向こうはかつての総理達が緊急時に逃げ込んだシェルターへの道なのだ。」
まさか使うことになるとはなと呟く総理を尻目に平賀はふと思い出す。自分の部屋に入り込んできたマスメディアの事を。
「開いたぞ!早く入ろう!」
「総理。私…忘れ物を致しましたので先にお逃げください。取って戻りますので…」
平賀は総理に向かって一礼するとあのマスメディアと別れた自身の部屋へ向かった。
「相も変わらず…頭の固いやつめ…」
総理は懐に手を入れてフッと微笑む。その中には黒く光る拳銃があった。
「紳士の嗜みとして護身用の銃を携帯するのは常識じゃないか。なぁ…ベレッタよ。」
銃を抜きいとおしく眺める総理。未使用なのか傷1つないベレッタM93Rは醜悪で臆病者の一人の男の覚悟を決めさせるのに充分な代物だったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!