ジョギング

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裕子が母親の左に置かれた小皿に入った御浸しを少し前に差し出した。 「どれ?」 「えっ、 これだけど・・・」 「あっ、 こんなのあったの」 「見えないの?」 「分からなかった」 「お母さん目が見えにくいの?」 「なんか、 左側がよく分からないんだよ」 「えっ、 いつから?」 「今、 気がついたよ」 「ちょっと、 右側は見えるの?」 「右は見えるね」 「えー、 ちょっと先生呼んでくるね」 裕子はまたナースセンターに行くとパソコンの前にいた看護士に 声を掛けた。 「すみません、 412の高井ですが、 先生いらっしゃいますか?」 「先生は回診に行っておりますが、 どうしました?」 「あの、 母親が、 左側の目が見えないようなんですが、 昨日まではそんなこと無かったので」 「わかりました先生に連絡を取ります、 少しお待ちください。 私も直ぐに行きますから」 「お願いします」 部屋に戻りながら裕子の動揺は大きくなっていく。
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