ジョギング

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部屋の引き戸をゆっくり空けて中を覗くと、 父親はベッドの中で寝ているようだった。 途中、 施設の看護師に様子を聞いたところ施設に来てから二日間、 殆どベッドの中で横になっていると聞いた。 ―やっぱり落ち込んでいるかな― 「お父さん、 どお?」 父親はゆっくりと目を開ける。 「ああ、 裕子」 「寝ていたの?」 「お母さんはどうだ」 「うん、 容態は落ち着いているから大丈夫だよ」 「そうか」 「お父さん、 ちょっと散歩に行かない?少し動いたほうがいいよ」 施設の玄関を出て、 先ほど走る車から見つけた公園まで歩いた。 「お父さんごめんね、 一人にして、 私は明日から昼間は仕事に戻らないといけないから、 おとうさんのこと見れないんだ。 しばらくは 我慢してください」 「そうだな、 お母さんも大変だしな」 「ねえ蜜柑食べない?お父さん蜜柑好きだったでしょ。 季節はずれで値段高かったんだから」裕子は施設に来る途中のスーパーで買った 蜜柑をトートバックから取り出した。
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