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きっと、メアリーのことも、前夫のことも、不幸な偶然だった。何度も見たあの夢もなにもかも、セアラの罪悪感が見せたものだったのだろう。
そう思うことにして、今度こそは、彼に微笑みかけた。
セアラにとってこれが二度目の結婚だとか、財産があまりない、というのは彼には全く関係ないようだった。衰え始めた容姿にさえ、あまり気を取られていない。
周りが驚くほどセアラは変わり、夫との関係は良好、商売もなかなか上手くいって、何もかもが夢のようだった。歳を取ることを嘆く人もいるけど、十年前よりも今の自分のほうがずっと生きやすい。
レストランで歯を出して笑った時、古くからセアラを知る人は飛び上がらんばかりに驚いた。
セアラは幸せのなかで、再び彼らを忘れた。愛した人も、憎んだ人も、みんな過去として。
もう、ママ・マガリの店を探し回ることもない。きっと彼女は今もどこかで、まじないを売っているに違いない。無垢な女の子たちに、罪のないまじないを。
恋が成就するように、恋人の関心を引き付けようとする子たちの後押しをするだけのもの。
初めて、セアラは夫に話す事ができた。死んでしまった彼らの事を。
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