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まじない
セアラはメアリーがどうしても好きになれなかった。
二人の母親は双子で、いとこ同士にも関わらず。
母の言いつけ通り、セアラは渋々メアリーとともに謝肉祭のにぎわい最中、祖母に砂糖のたっぷりかかったドーナツを届けにでかけた。
一八五八年のアメリカは北部と南部、真っ二つに割れようとしていた。物騒な話題が続いていた。南部連合も戦争も、合衆国から離脱することに反対している父親の影響から、家で話題に上がることはなが、新聞や世間の声は大きすぎて、少女たちの耳にも届いてきた。
メアリーにもセアラにも関係のないことだったが、熱気を孕んだ雰囲気に当てられて、少々気を悪くしていた。同じ熱気でも、マルディグラは別。フロート車が細道を練り歩く、去年の光景を思い浮かべた。最終日のパレードに人々は興奮し、しばし浮世のことは忘れた。
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