第2章 おれの知らないきみ

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第2章 おれの知らないきみ

「篠宮くん。都倉は?」 「あっ。藤堂さんっ」 オペ室の外のロビーで、長椅子に座りうなだれていた雅紀は、駆けつけた藤堂の呼びかけに、弾かれたように顔をあげた。よろよろと立ち上がろうとする雅紀を、藤堂は手で制して隣に座り 「まだ中かい?」 「頭を打って、酷い出血で…意識なくてっ。すいません……俺がついてたのに……こんな、こんなことになって……俺が」 「篠宮くん。落ち着きなさい。君の責任ではないよ。ひき逃げ……だったそうだね。君は怪我はないのか?」 雅紀は真っ青な顔で首をふり 「暁さんがっ庇ってくれたんですっ俺がっ守りたかったのにっ」 藤堂は、ガタガタ震える雅紀の肩をぎゅっと掴んで 「落ち着いて。ゆっくり深呼吸しなさい。そうか。都倉は君を守ったんだね。ならばきっとほっとしているよ。今度はちゃんと、大切な人を守れたんだからね。大丈夫。都倉は君を1人にはしないさ。だから落ち着いて、気持ちをしっかり持つんだ。そんな様子じゃ、君まで倒れてしまうからね。せっかく目を覚ましても、君が倒れてしまっていたら、都倉はきっと悲しむよ。そうだろう?」 雅紀は頷くと、大きく息を吸って吐いて、それを何回も繰り返した。
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