2人が本棚に入れています
本棚に追加
俺はもうすぐ51歳になる。にもかかわらず、アルバイトで生計を立てていた。仕事には恵まれず、早過ぎた結婚生活は1年と持たなかった。この歳で、独り身は身体にこたえた。
子供の頃もっと勉強していたら大学に行き、今の生活も違っていただろう。
今夜は化学工場で夜勤の警備だ。そして、各部屋を見回っていた時、何処と無く甘い香りがした。「何だこの匂いは?」すると急に目の前が、くらくらと回りだした。何だ?「うわあ~!」
気がつくと朝になっていた。空き地で寝ていたようだ。「あれ?ここは何処だ?」見渡す限り、高層ビルの類は余り見かけなかった。なんだか懐かしい感じがした。
少し行くと商店街が見えてきた。いつもと違い、活気に溢れていた。「何かのイベントか?」そしてふと、電器屋を覗いた。なんとテレビは薄型ではなく、全てがブラウン管だった。
「う、嘘だろ?」俺は店員に、今は何年か尋ねた。
「あんた何を言ってんの?昭和52年に決まってるでしょうが」と笑われた。
タイムスリップしたのか?本当に?
そう言えば、昔映画で観たことがある。学生がタイムスリップする、時をかける…なんだっけ?
とにかく俺は今の生活を変えたかった。
そこで俺は、自分に会いに行く事にした。勉強させて、未来を変えるんだ。実家は直ぐに分かった。
すると男の子が、玄関から出てきた。
あいつだ!そう10歳の俺だ。確かにアホづらだった。俺はさりげなく声をかけた。
「や、やあ僕、今から学校?」
「そうだけど、おじさん誰?」
「おじさんかい?おじさんは…き、教育委員会のものだよ」なんとか言い切った。
「それって偉いの?」
「そうだよ。今ならサービス期間で、タダで勉強を教えてもらえるよ」おっ!中々調子いいぞ。
すると子供の俺は「僕はいいや、勉強嫌いだから」とスタスタ行こうとした。
「あ、ちょっと待ちなさい。お菓子も食べ放題だぞ」と餌を吊り下げた。
「え?本当にタダなの?」どこまで厚かましいやつなんだ!「そうだよ」と俺が応えると
「じゃあやるよ。おじさんの熱意に負けたよ」子供の俺は即答していた。お菓子に負けたんだろ。
我ながら情けない。しかし、取り敢えずは成功だ。
夕方4時に約束して別れた。
最初のコメントを投稿しよう!