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西武百貨店の前では、忙しそうに行き交う人々の靴音がタイルの床を響かせている。
レンタル彼氏がいつ来るかもわからない状態で顔をあげることも出来ない私は、既に数十分間下を向きっぱなしで首がバキバキだ。
待ち合わせの際の目印で、私は緑色のガウチョパンツを履いていると伝えてある。
小春と海斗は失恋の痛手を癒せって言ってたけど、一颯にフラれたのは事実だけど、そもそもそこまで痛手を感じていない。
多分、そこまで一颯のこと好きじゃなかったんだろうね、私。
てか。あー、やば。
今更ながら緊張してきちゃった。
「ふぅぅぅぅ」
首をこきこき鳴らしながら、緊張を吐きだすように長めの深呼吸。この場所についてから何十回目の深呼吸だろうか。
やっぱり帰ろうかな……。
__「カエルパンツみっけ。小林さんですか?」
突如、私の旋毛の先から男性の声。
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