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 リビングには、朝食が用意されている。  オレンジジュースと小さなあんパンやクリームパンが、いくつもならべてある。  あらったばかりのブドウにのったしずくは、丸くきれいに盛り上がっている。  ほんの少し、お皿を動しただけで、水の玉はすべりおちて、ブドウの実の間に消えていった。もう、こぼれ落ちるしずくはない。  わたしの涙もこんなふうに、きょうの分は終わり、となくなってしまえばいいのに。  胸の中でくちゃくちゃになった気持ちの糸を、どうしてもほどくことができない。知らない顔をすることもできない。自分がどうしたいのかもわからない。  いっぱいいっぱいになった気持ちは、もどかしさに耐えることができなくて、また泣いてしまう。
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