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彼女も、僕と同じ不登校だった。ただ、彼女は僕と違い、不登校になる理由が特殊だった。別にいじめがあったわけじゃないし、勉強が嫌いなわけでもない。親が暴力を振るうわけでもない。僕からしたら、それは不可解だし、恵まれているとも思ったし、失礼ながら彼女が嘘をついているのではとすら思った。 「学校恐怖症とでも言うべきなのかな。とにかく、私は学校に行こうとすると、道のどこかで身体が動かなくなるの。突然、前触れもなく、身体が言うことを聞かなくなるのよ。なんでって言われても、わからない。私は学校に行きたいのに、身体が学校に行かしてくれないの。でも、そんなことをお父さんやお母さんに言っても、困った表情をするだけ。他のみんな……先生も友達も、みんなそうなの」 僕は黙って、彼女の話を聞き続けていた。彼女の目はどこまでも真剣で、悲しんでいて、僕はさきほど思ったことを恥ずかしく思った。 「それで、どんどん人と会いたくなくなるの。他の人と違うから、普通に見てくれない。たぶん、心の中では邪魔だなぁと思っているんだろうなと思ってしまう。そんなの嫌でしょう? だって、私のような存在から、みんな距離を置きたがると思って日々を暮らすのよ? とても辛いことなの。一人になれたら、どれだけ楽なんだろうと思わずにはいられない」 彼女の抱えている悩みが、僕の悩みのように聞こえた。カラスはどこか遠くで無情に鳴いていた。学校帰りの男子高校生たちが公園前の道を通って彼らにしかわからない話題で笑いながら姿を消していった。夕日の色は薄まりつつあって、夜の気配が茂みの中に潜んでいることが感じられた。そして後は、至って静かだった。 「僕も」と切り出したとき、かすれた声が出た。僕は一度咳払いをした。「一人になりたいと思って、今は不登校なんだ」 彼女は、仲間ですね、と感慨深げに言った。そのまま、奇遇にも、と言葉を付け足すのではないかと僕は連想した。そして、不思議なことに、僕は彼女の前では自然と自分の話をすることができた。暴力から不登校になった経緯をどう感じて、どう思ったのかを話すことができた。ただ、同じ不登校とは言え、事情の違う彼女に対して、僕の事情は彼女に気を遣わせてしまうのではないかと心配になった。
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