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走っていた。フクロウが鳴いた。闇はじっと息を潜めている。竹藪はどこまでも深くなっていった。距離感がわからなくなる。僕は彼女を探していた。彼女ともっと話がしたい。そんな単純な思いさえも、竹藪は阻んでいるように感じた。
彼女と再会を果たしたというのに、昨日の僕はいったい何をしていたんだ。
僕はひたすら竹藪の中を走りながら後悔する。もう会えないかもしれないという焦りが、僕をより一層、竹藪の奥へと駆り立てた。僕は混沌の中に吸い込まれていく。
そして、僕はついに体力の限界に達し、両膝に手をついて立ち止まった。酸素が必要だった。彼女が必要だった。光が必要だった。
僕は目印を探していた。彼女の灯らせる光だ。それさえ、見つけられたら、僕は彼女に会える。
「かぐや! いるんだろ、返事してくれ!」
僕は力の限り叫んだ。竹藪が少し騒めいた気がした。しかし、僕の声はたちまち夜の静けさに吸い込まれていった。彼女からの返事は聞こえなかった。
僕は周りを見る。竹ばかりだった。どれも無表情で、何の助けにもならない。もう行先も帰り道もわからなかった。
前へ進むしかない。真っ直ぐ、ずっと真っ直ぐ。
もちろん、その考えに当てがあるわけではない。ただ、真っ直ぐ進むことが僕には大切なように感じたのだ。竹藪がそう言っているのかもしれない。
僕はまた走り出した。前だと思う方に向かって。
そして、僕はようやく見つける。
光を灯す竹に。
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