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「この竹林は私のひいひいひいお祖母ちゃんの頃から……いえ、もっともっとずっと前からあるの。不思議でしょう? 必要もなさそうな竹林がずっと誰の手にもつかず、ひっそりと残り続けているの」 「僕は竹が光ることも、人が竹を光らせることも不思議でならないよ」 「そうね。普通、人は手品かなにかと疑って見るものだと思う。でも、竹が光ることは昔の人なら知っていたことだったの。悲しいことに、今はみんな眠っているから、そのことを忘れてしまっているの。それは、仕方のない話ではあるのだけど」 「忘れる? 知らないではなく?」 「そう、忘れるの。知らないわけではなく」 「それはまた妙な話だね」 「それは、いつ竹が光ることを知って、いつ竹が光ることを忘れたのか、ということ?」 僕は(うなず)く。 彼女は、うーん、と言って悩む。いや、悩むふりかもしれない。 「ごめんだけど、それを教えることはできないな。というよりは、言葉にするのは困難な問題なの。それでも、あえて言うなら、何だろう……」 フクロウの声が聞こえた。夜の静けさが僕の肌を冷たく触る。彼女は考えているというよりは、耳を澄ましている。 「『(おきな)が善行を作ったから助けにと』月の人はかぐや姫を月から地上に下ろしたの」 フクロウの気配を一通り探った後で、彼女は竹取物語の月の人の言葉を引用した。
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