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光る竹を見つけた翁が、その竹の中にいたかぐや姫を娘として育てた。かぐや姫はとても美しくて、何人もの男たちに求婚され、無理難題を投げかけて全て断った。そして、月の都からの迎えが来て、かぐや姫は月に帰ってしまった。
僕は竹取物語のあらましを思い出し、それから昨日の竹林のことを考えていた。そして、そこにいた竹を光らせる少女を考えていた。彼女の言葉。彼女の表情。彼女の姿……。
僕は似ていると思った。いや、それどころか、あのときの姿のままだと思った。
ベッドから起きた後、僕は鏡に向かった。夢にしか思えない出来事だというのに、夢ではないことを僕は理解している。混乱もしている。防衛本能のように、僕は自分の姿を見る。存在を確かめるように。
もちろん、僕はいた。どこか疲れたような痩せこけた顔だ。好きではない顔。ますます父に似てきた。
とりあえず、顔を洗い、寝癖を整え、歯を磨く。朝食は昨日作った肉野菜炒めの残りとご飯、そしてインスタントの味噌汁だ。食後は皮膚炎の薬を飲み、食器を丁寧に洗う。
一人暮らしを始めて三年が経つ。大学入学と同時に始めた一人暮らしだ。奨学金を受け、その負担を減らすためにアルバイトをしていた。アルバイトは飲食店と家庭教師で、飲食店の方は高校一年の頃から行っていた。大学生で一人暮らしをすると決めて、そのための資金集めにと始めたアルバイトだった。大学生に入ってからは、家庭教師も始めた。教師になるのが、僕の夢だったからだ。教育大学を選んだのも、そのためだった。
そして、夢を持つきっかけは、子どもの頃、彼女に出会ったからだった。
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