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子供の頃は、よく泣いていたのを憶えている。勉強も運動もあまりできなかったし、それをどうにかしようと頑張っても、上手くいかなかった。父にはこっぴどく叱られ、殴られた。怖がって慎重になればなるほど失敗は重なって、父からの怒号と体罰は過激になるばかりだった。 そして不幸なことに、逃げ場がなかった。母は僕の幼い頃に他界してしまっていたし、頼れる親戚もいなかった。学校では、いじめが待っていて、反抗しない僕に目をつけた奴らに暴力を振るわれた。 安息は眠るときで、ずっと永遠に明日が始まらなければいいのにと願いながら眠った。学校をサボることもあった。しかし、そのときは先生から父に連絡が渡り、家に帰ると父から体罰を受けた。先生も見て見ぬふりをするし、他のみんなも僕を無視した。それは、中学二年生まで続いた。   暴力の連鎖が切れたのは、至極当然の結果のように思う。 僕は不登校になった。 きっかけは些細なことだった。商店街の何もないところで転んだのだ。たったそれだけのことだった。そのとき僕が顔を上げて見た光景は、はっきりと憶えている。人が僕を見て見ぬふりしていた。誰も助けようとしなかった。いつも聞こえる喧騒(けんそう)が疎外感を強調するように耳につき、僕は目眩(めまい)(さいな)まれた。 もう何も見たくなかった。何もしたくなかった。みんな、僕のことを忘れてしまえばいいと思った。断ち切ってくれ。殺してくれ。僕を一人にさせてくれ。 そう思った瞬間、僕は不登校という文字が浮かび、ぷつりと何かが切れた。
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