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夕方、買い物に行く途中に、公園がある。とても小さな公園だ。滑り台もブランコもない。申し訳程度にベンチが二つあるだけだ。それでも、公園と刻まれた石造りの塀があることで、辛うじて公園であることがわかる。
彼女は、そんな小さな公園のベンチに一人、ぽつんと座っていた。
僕は最初、彼女の姿を目にしたとき、綺麗だと思った。華奢な身体に白のワンピースを身に着け、彼女は物憂げに地面を眺めていた。そこだけ、時間が止まったように静止していて、夕日が赤く繊細に染めていた。もちろん、僕が声をかけることはない。通り過ぎるだけだ。何日も、その夕日に染まる彼女を見て、僕は通り過ぎていった。
彼女と目が合ったのは、通り過ぎる日々が一週間ほど続いた頃だった。僕はどきりとして思わず目を逸らした。不安が胸を圧迫する。僕に見られたことで、明日から彼女はいなくなるかもしれない。そう思うと、僕は心の何かが抜け落ちたような心地がした。
しかし、翌日も彼女はいた。彼女は僕の存在に気付くと、僕を見た。お互い見つめ合った。その一瞬が、とても長く感じられ、僕は恥ずかしくなって結局、目を背けた。僕は頭に血が上っているのが、よくわかった。僕は落ち着きたいと思い、その場を離れようとした。
「あ、あのっ!」
彼女は、僕を呼び止めた。
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