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「あ、髪の毛が。ちょっと解きますねー」
一つにひっつめていた髪を手早く解くと、またなにやらやっている。
わー、もしかして、髪にからまった? 最悪、最低、いやー!
鱗粉まみれで髪に絡みつくヤツを想像して涙目になる。
「大丈夫ですよー、心配したようなことはないですよー」
強張りが伝わったのか、頭をポンポンと優しく叩かれた。
「よし、できた!」
「できた? なにが?」
身体を離して見上げると、永田はにっこりと微笑む。
「可愛いですよ、先輩」
ビルのガラスに映った姿を指差す。
ひとつにひっつめた髪型は、結び目をずらしサイドが緩く解されて、やわらかく落ち着いた印象になっていた。
「すごい!」
素直に賞賛を送る。いや、まじで。器用すぎるでしょう。
姉か妹か、手のかかる彼女がいた経験アリだなこれは。
「デキる男は何だって出来るんです」
えへん、と鼻高々に威張ると、
「小説のヒーローとして、これ以上ないと思いませんか?」
ニヤリと意地悪く笑った。
不意打ちの辱めに、かっと顔が赤くなる。
すっかり忘れてた。こいつ、小説の主人公にしてくれって言ってたっけ。
「こうやって僕の凄さカッコよさを知って、それを作品に活かしてくださいね」
「はいはい……」
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