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「形あるものはいつか終わるのです」
「仕方ないよね、否が応でも時代は移り変わるし、いい機会だわ。頑張って買ってやる!」
「ちょっと高いですけどねぇ」
「……あんたは買わせたいの、買わせたくないの?」
「ははは。じゃあ、気が変わらない内に。今週末とか空いてます?」
さらっと週末の予定を聞いてきた。
最近、彼の周りの風通しは良い様で、小声とはいえこんな話をしていてもあまり気にされない。それに今日は良い陽気で、外食に出る者が多いのか人も少なかった。
永田は頬杖をつきながら、顔を僅かに寄せてくる。
近付くと、影を作るほど長い睫毛が認識できた。スッと通った鼻筋や薄く形の良い唇は、なるほどイケメンである。
私は不意に落ち着かない気持ちになって、体を逸らした。
「昼まで寝ている予定。あと、夜は飲みに行く予定!」
素っ気なく答えると、永田が苦笑する。
「まぁ休みの日はそんなもんですよね。夜はお一人で?」
「あんた、さすがに私だって他人と飲むことくらいあるわ」
「合コンですか?」
「……違うけど、おしい! 友達が男の人紹介してくれるって」
「それを合コンと言うんです」
呆れたように言う。
最近、同情からかやたらお誘いがあることを彼は知っている。
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