2.お出かけしましょう

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「で、その格好ですか」  季節は初夏。昼間は暑くもあり、でも夜になると肌寒くもあり。  つまり、オシャレ音痴にとって一番難しい季節なのだ。 「だからってそれ。しかも黒」 「Tシャツにパーカーよりマシでしょ?」 「……どっこいどっこいじゃないですか」 「そんな!」  悲鳴に似た叫びをあげる。  ファッションの難しさに混乱した私は、オフィスで通用するような飾り気のないスーツを着て来てしまった。しかも黒。一応スカートだけども……。  対して永田は年相応のなんだかこじゃれた格好をしていた。  へー、そのジャケットかわいいね、え?テーラード?なにそれ? みたいな。  釣り合いから考えると、年下の永田が浮きまくる。  保険の勧誘かな? 「先輩、この後合コンですよね? それもこのままの格好で行くんですか?」 「え、だめ? やっぱだめ?」 「だめでしょ……」  はぁーぁ。でかいため息をついて、永田がこれでもかと悲しい顔をした。  確かに友達の紹介という雰囲気ではなくなってしまうかも。 「いくら持ってます?」 「えっ……と。あまり持ち合わせは」 「カードは?」 「お酒飲むときは失くしたら困るから持ってきてないの」 「……そうですか。このバカ」  永田くんはいっそ爽やかに笑いながらディスってくる。 「まずは服、買いに行きましょう。買ってあげます」 「ひぇえ?! い、いいい、いいよ!」 「ダメ、買います。なぜなら、一緒に歩くのが恥ずかしいから!」  がーん。 「これはプレゼントですが、先輩の好みは聞きません。人形になって下さい」 「はい……」  申し訳なさと居たたまれなさで私は小さく縮こまったまま、永田に手をひかれて店を何軒かハシゴし、着せ替え人形の任務を全うした。  正直、中のシャツを可愛いのに替えたら問題ないのではとか思いつつ、黙ってお任せした私もどうかとは思う。  でも、男の人に服を選んでもらうなど、生まれて初めての経験だったのだ。  私はちょっとした好奇心から、永田に身を任せた。
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