1.はじまりは一生の不覚

2/10
前へ
/398ページ
次へ
 お手本を示してみなさいよ、お手本を。そこまでボロクソ言うんなら、よっぽどご立派なんでしょぉねぇ。  私が正面の永田くんを睨みつけている向こうで、女子達が「知りたい!」と盛り上がった。  あまりこういう話題をしない永田。顔だけはいい永田。狙っている女子の多い永田。ざまあみろ永田。 「そうですね。好きなタイプは、黒髪で、大人しめな容姿で……」  明後日の方を見て何事か想像しながら答える。  その言葉に、茶髪で巻き髪の事務員がサッと自身の髪を掴んだ。黒髪の女子はコッソリとほくそ笑む。 「化粧もあまりしてなくて、ネイルなんて言語道断、服装も清楚系で、ヒールとか高いのは履かなくて、性格は優しくて怒らなくてニコニコしててワガママ言わなくて、逆に僕の言う事きいてくれて料理が出来て」  まくし立てる注文の多さに女子達の顔が引き吊り出す。  皆どこかしら引っかかっているのだ。というか、引っかからないのはお母さんくらいだ。 「処女。絶対、処女は譲れません」  トドメに永田が言い切ると、周囲の空気が凍った。  あぁ、お母さんの線も消えたな、と私はひとり呑気に思う。 「げ……」 「……最近多いっていうアレ?」 「え、うそ、きもっ……」 「あ、キモイとか言う女も無理っす」     
/398ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2459人が本棚に入れています
本棚に追加