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お手本を示してみなさいよ、お手本を。そこまでボロクソ言うんなら、よっぽどご立派なんでしょぉねぇ。
私が正面の永田くんを睨みつけている向こうで、女子達が「知りたい!」と盛り上がった。
あまりこういう話題をしない永田。顔だけはいい永田。狙っている女子の多い永田。ざまあみろ永田。
「そうですね。好きなタイプは、黒髪で、大人しめな容姿で……」
明後日の方を見て何事か想像しながら答える。
その言葉に、茶髪で巻き髪の事務員がサッと自身の髪を掴んだ。黒髪の女子はコッソリとほくそ笑む。
「化粧もあまりしてなくて、ネイルなんて言語道断、服装も清楚系で、ヒールとか高いのは履かなくて、性格は優しくて怒らなくてニコニコしててワガママ言わなくて、逆に僕の言う事きいてくれて料理が出来て」
まくし立てる注文の多さに女子達の顔が引き吊り出す。
皆どこかしら引っかかっているのだ。というか、引っかからないのはお母さんくらいだ。
「処女。絶対、処女は譲れません」
トドメに永田が言い切ると、周囲の空気が凍った。
あぁ、お母さんの線も消えたな、と私はひとり呑気に思う。
「げ……」
「……最近多いっていうアレ?」
「え、うそ、きもっ……」
「あ、キモイとか言う女も無理っす」
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