5.夜と映画と夢の中

2/9
2412人が本棚に入れています
本棚に追加
/398ページ
 その代わりと言ってはなんだけど、家賃が安かった。かーくんと2人で住むのに丁度いい所を探すのは苦労したっけ。これが東京なら無理だっただろう。 「この部屋に男を連れ込もうなんて、いい度胸ですね」 「だ、だからそんなつもりなかったって!」 「どーだか」  本当に。ただ、どういう未来にしたいか決められなかっただけだ。  決断を迫られるのが早過ぎたのもあるが、誰かをまた好きになりたい、独りは辛いと焦って、決めてしまいたい気持ちもあって。  苦さをビールで?み下す。  永田もビールを飲みながら、無表情でこちらを見ていた。 「永田は私がこうなること、わかってたんだね」 「はい」  即答かよ。いや、助かったけどさ。  私は苦い顔をしながら、なんとなく永田の持って来たDVDの袋を漁った。  簡素なプラスチックのパッケージに、タイトルの書かれたシールを読む。 「……なにこれ。恋愛ものばっかり」 「お好きかと。あんな小説書くくらいですから」 「まぁ嫌いではないけどさー。アクションとかコメディが好き。ちょっと悲しい奴とか」 「悲しい奴とかは、僕も好きですね」  そう言って幾つか挙げた永田の好きな映画は、悲恋ものが多い。  私は適当に悲しそうな一本の映画を選ぶと、DVDプレーヤーにセットした。  部屋の電気を消して、2人並んでソファに腰掛ける。     
/398ページ

最初のコメントを投稿しよう!