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その代わりと言ってはなんだけど、家賃が安かった。かーくんと2人で住むのに丁度いい所を探すのは苦労したっけ。これが東京なら無理だっただろう。
「この部屋に男を連れ込もうなんて、いい度胸ですね」
「だ、だからそんなつもりなかったって!」
「どーだか」
本当に。ただ、どういう未来にしたいか決められなかっただけだ。
決断を迫られるのが早過ぎたのもあるが、誰かをまた好きになりたい、独りは辛いと焦って、決めてしまいたい気持ちもあって。
苦さをビールで?み下す。
永田もビールを飲みながら、無表情でこちらを見ていた。
「永田は私がこうなること、わかってたんだね」
「はい」
即答かよ。いや、助かったけどさ。
私は苦い顔をしながら、なんとなく永田の持って来たDVDの袋を漁った。
簡素なプラスチックのパッケージに、タイトルの書かれたシールを読む。
「……なにこれ。恋愛ものばっかり」
「お好きかと。あんな小説書くくらいですから」
「まぁ嫌いではないけどさー。アクションとかコメディが好き。ちょっと悲しい奴とか」
「悲しい奴とかは、僕も好きですね」
そう言って幾つか挙げた永田の好きな映画は、悲恋ものが多い。
私は適当に悲しそうな一本の映画を選ぶと、DVDプレーヤーにセットした。
部屋の電気を消して、2人並んでソファに腰掛ける。
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