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「わりと本格的に観るんですね」と、永田が苦笑する。ただの口実だったのに、と。
テレビの光に照らされて、家具のキワやビールの泡が光った。段ボールでさえ幻想的で、狭いいつもの部屋が、別世界に変わる。
宇宙にこの部屋だけがぽっかりと浮いているような、世界中から隔離されたような、この世に二人きりのような。
私はこの不思議な雰囲気が、昔から好きだ。
映画館とは違う、でも普段の部屋でもない、異空間。
「……中学の頃、初めて彼女の部屋で映画を観たのを思い出しました」
唐突に、永田が呟いた。
「こうやって、電気を消して寄り添って、恋愛映画を観ました。その映画を観た後、僕は振られちゃったんですけどね」
「……なんで?」
映画を観ただけで?
質問を続けようとすると、永田は唇に人差し指をあてて薄く笑った。
「……しっ。はじまりますよ」
長い宣伝部分が終わり、タイトルが映し出される。
私は黙って画面を見つめた。
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