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なぜ永田が中学の彼女に振られたのか、私はすぐに知ることになる。
永田は映画の後半、泣いていた。
といっても号泣するわけでなく、ただ溢れた涙がはらはらと頬を伝っていた。
長い睫毛を濡らし、膝の上に頬杖をついて口元を抑えながら、永田は映画が終わるまで、静かに、静かに泣いていた。
テレビの青白い光が、涙の川をちらちら照らすと、彼の?はキラキラと輝いて見えた。
それがあんまり綺麗で、私は驚きと共にこっそりと彼に見惚れて、映画の内容よりも、彼の涙を鮮明に脳裏に焼きつけていた。死んでしまう可哀想なヒロインを見つめる永田の、苦しそうに歪められた顔も美しい。
ただ、中学生の女の子にしてみたら、カッコ悪い泣き虫な男の子だったのかもしれない。
感動屋の男子を可愛いと思えるのは、私がそれなりな歳だからだろう。
ましてや普段の性格があんまりなこの人の涙を、良いと思うのは難しいのかもしれない。
「僕は綺麗なものが好きなんです。綺麗だと、つい涙が出る。それだけです」
映画が終わると、永田は感動したわけじゃありません、と謎の強がりを言って、グイと袖口で涙を拭う。
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