1.はじまりは一生の不覚

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 くそ、私だって、内心は涙が出そうなほど落ち込んでいるのに。  幸いにも皆大人なので、騒ぎ立てず広がり過ぎず。  ただ合コンの誘いや、紹介しょっか?などのお声掛けが増えたくらいだったのが有難い。  だが、悪い事は続くものだ。  あろうことか、あんな失敗をしてしまうとは──── 「先輩」  退社時間になり、皆が退社して行く中、永田が声をかけてきた。  あの日以来、若干彼を避けてしまっていた私は、警戒しながらチラリと横目で様子を伺う。  別部署で働く彼は、終業時間を待ってわざわざやって来た。  しかもにっこりと微笑みながら。怪しい……。  最近は残業代やら勤務時間やら煩いため、私も最小限のことだけ急いで片付けて早く帰りたい。  繁忙期でもないので、人はどんどん居なくなる。ふたりきりになりたくない。  忙しなく手元を動かしていると、永田が私のデスクまでやって来た。 「なに? なんの用?」  顔を上げずにぶっきら棒に訊く。  しかし永田はめげずに身を寄せてくると、小声でそっと囁いた。 「先輩、これ……」  ペラリ。  私の眼前に5、6枚のルーズリーフの紙を差し出す。  束にまとめられたそれの一番上は白紙だが、裏面は手書きの文字でビッシリ埋められているのが透けて見える。 「なに、これ……?」     
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