2463人が本棚に入れています
本棚に追加
くそ、私だって、内心は涙が出そうなほど落ち込んでいるのに。
幸いにも皆大人なので、騒ぎ立てず広がり過ぎず。
ただ合コンの誘いや、紹介しょっか?などのお声掛けが増えたくらいだったのが有難い。
だが、悪い事は続くものだ。
あろうことか、あんな失敗をしてしまうとは────
「先輩」
退社時間になり、皆が退社して行く中、永田が声をかけてきた。
あの日以来、若干彼を避けてしまっていた私は、警戒しながらチラリと横目で様子を伺う。
別部署で働く彼は、終業時間を待ってわざわざやって来た。
しかもにっこりと微笑みながら。怪しい……。
最近は残業代やら勤務時間やら煩いため、私も最小限のことだけ急いで片付けて早く帰りたい。
繁忙期でもないので、人はどんどん居なくなる。ふたりきりになりたくない。
忙しなく手元を動かしていると、永田が私のデスクまでやって来た。
「なに? なんの用?」
顔を上げずにぶっきら棒に訊く。
しかし永田はめげずに身を寄せてくると、小声でそっと囁いた。
「先輩、これ……」
ペラリ。
私の眼前に5、6枚のルーズリーフの紙を差し出す。
束にまとめられたそれの一番上は白紙だが、裏面は手書きの文字でビッシリ埋められているのが透けて見える。
「なに、これ……?」
最初のコメントを投稿しよう!