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「こっちが聞きたいです。先日、頂いた資料の中に挟まってました」
ルーズリーフを手に取り、ペラと捲ると……
「げっ!」
サーッと血の気が引き、青くなる。
「なんです? これ。この字、先輩の字ですよね」
そこに連なる文字は、まごう事なき私の字。
そして紡がれた文章は────
三十路ダメ女な私を甘やかす、イケメン王子様との夢のようなラブラブロマンス妄想小説であった。
「こーゆーの、書かれるんですね……」
永田くんの冷ややかな目が痛い。
な、な、なんでよりによって、こいつに!
推測するに、書いていたものを間違えてカバンに突っ込んで、資料のファイルに挟まってそのまま渡してしまったのだろう。
私はなんて迂闊なんだ! なんて馬鹿なんだ!!
冷や汗が吹き出しだらだらと流れる。私はあわあわしながら永田を見上げた。
「一人でこういうの書いて自分を慰めてるんですね。三十路にもなって、なにやってんだか……」
「こ、こ、これ、よ、よ、よん……!?」
「あ、はい。全部読みました。仕事の資料だといけないんで」
てへ、と笑う。
絶対嘘だろ。わかってて読んだくせに!
「あああああ……」
私は崩れ落ちるように机に突っ伏した。コーヒーに手が当たりそうになり、永田が慌てて隣の机に避難させる。
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